本書は限定発行書であり、非売品となります。
紹介
暁星国際中学・高等学校ヨハネ研究コースにおいて、コース創設代表・横瀬和治により行われた相互参画型講義「セッション」の記録を、全3巻に集成。同コース主任研究員を中心として制作され、ごく少部数の限定発行書として刊行された。
まえがき
本記録集は、暁星国際学園ヨハネ研究の森コースにおいて、コース創設の代表者である横瀬和治先生により行われた「セッション」の内容を記録、編集したものである。
横瀬和治先生による教育実践の理論的側面は、すでに、2013年に発行された記念誌『新言語教育学』(グローバル教育研究会イーグル)に詳しい。一方で、ヨハネ研究の森において繰り返し行われてきた実践そのものであるセッションについては、その性質上、ひとつの回だけを取りあげても教育理念の全貌が掴みづらく、記録集としての編纂が避けられてきた。
本記録集は、この問題を克服し、セッションの記録を通してヨハネ研究の森の教育理念を把握することを目的として編集されている。そのために、具体的な編集方針としては、以下のような形をとった。
まず、掲載の対象とするセッションは、主に2010年度から2019年度の10年間に、横瀬和治先生によって実施されたものとする。その上で、掲載にあたっては、セッションが実施された年度を問わず、近しいテーマごとに配置することとした。これにより、単年度の記録だけを参照するだけでは明らかにならなかったヨハネ研究の森の理念を、厚みをもって理解できるものと期待するところである。また、実際のセッションに限らず、ヨハネ研究の森コース内で発刊された情報媒体に掲載されたインタビュー記録も、重要な資料として掲載することにした。
次に、本記録集では、実際のセッションの流れをできるだけ阻害せず、当時の展開のまま記録することを重視した。掲載されたセッションは、当時の状況下になくては正確な意図を捉えられないような場合を除いて、可能な限り、その展開を再現することに注力している。これにより、参加者によって新たな理解が生みだされていく「理解の相互形成」の場としてのセッションの姿に、そのまま読者が触れられることを目指した。
最後に、本記録集は全3巻構成とし、初巻に「教育原理」、第2巻に「ことばと音楽」、第3巻に「人類史研究と教科教育」をテーマとしたセッションを収録する予定である。この3巻それぞれの内容は、本来であれば正確に分類することができないものであり、各テーマとも、他のテーマに深く結びついている。しかし、日々の教育実践にあって、求める題材ごとに素早く参照できる利便性を重視し、本記録集は、あえて3領域に分けて編集するものとした。
なお、記録の不十分さ、および用語・表記の不統一に関しては、一主任研究員による編纂作業の限界もあり、今後の課題とせざるを得なかった。こうした不完全な点についての責は、すべて編集者の負うところである。その上で、本記録集が、新たな実践へと臨む諸氏にとっての指針となり、活用されることを強く願ってやまない。
目次
はじめに
ヨハネ研究の森で求められる能力とは(2019年6月29日)
グローバル教育とは何か(2014年7月12日、第2回グローバル教育研究会)
「自生する学び」とは何か(2011年9月16日)
「できる」こと(intelligence)と「わかる」こと(intellect)(2018年9月22日)
濱口梧陵と「実践的知性」(2018年12月6日)
日本の学校教育と受験勉強(2011年3月1日)
進路と分業(2015年11月6日)
「文明」を検討するにあたって(2012年11月30日)
「干潟」と「消去法」(2018年4月13日)
文明と環境(2010年11月10日)
遊動と定住について考えるために(2011年2月4日)
生物と環境(2011年12月1日)
戦後日本と民主主義(2014年12月4日)
民主主義と国民国家(2014年8月20日)
政治と民主主義について考えるために(2014年9月26日)
人間の数覚について(2016年5月20日)
人類史研究と人間の内在性(2010年9月17日)
教科と「知識」(2010年11月19日)
教科学習において重視すべきこと(2012年6月21日)
教科学習における要約の重要性(2012年6月12日)
教科書をパラフレーズする意義(2012年6月1日)
教科と「型」(2012年3月2日)
「できる」ことと実技教科の問題について(2012年4月19日)
教科学習と「干潟」(2011年3月3日)
教科ゼミをどのように構築すべきか(2018年4月19日)
教科における基礎・基本について(2011年7月7日)
教科学習をどのように位置づけるか(2018年8月30日)
人間とは、ものを知りたい存在である(2018年4月25日)
著者プロフィール
横瀬 和治(著)
1945年、東京都八王子市生まれ。明治学院大学大学院修士・博士課程にて、英語学・応用言語学を修める。専門は、外国語教育・バイリンガリズム・バイリテラシー・第二言語習得・言語心理学。1973年~1995年にかけて、LCS教育研究所(1973年)、(株)ラックス生活分析研究所(1986年)、(株)サンプロップ研究所(1989年)、ACEロサンゼルス第二言語研究所(1990年)各所長を歴任。日本国内では、民間教育機関(外国語学校、予備校、学習塾、学習センター)の研究・企画・開発・運営・コンサルティングに携わり、米国(カリフォルニア大、オレゴン大)・カナダ(トロント大、ウォータルー大)・オーストラリア(ボンド大、アジリス外国語学校)にあっては、第二言語習得理論に基づくリテラシー教育とThe Total Immersion Programの開発実験に従事した。その後、宮城県宮城郡利府町にSLAリサーチ研究所(1996年)を設立し、「機会開発」としての学びをコンセプトとする私塾NeoALEXを付設。以来、暁星国際学園ヨハネ研究の森コース(2001年設立)代表を務めるなど、画期的なスタイルによる教育の在り方を研究・開発し、各方面から注目を集めている。